最後の種蒔き
今朝、畑に出たら、土が脈打っていた。
大袈裟に言っているのではない。文字通り、土が、心臓のように、どくん、どくんと動いていた。手を当てると、温かい。生きている。この土地全体が、一つの巨大な生き物のようだ。
80年間、わしはこの土を耕してきた。この土に種を蒔き、水をやり、作物を育ててきた。だが、今なら分かる。わしが育てていたのではない。この土地が、わしらを育てていたのだ。家畜が餌を食って太るように。わしらは、100年かけて、じっくりと「育てられて」いたのだ。
禍ツ神様。あなたは、100年前にこの土地に種を蒔いた。その種が、わしらだ。そして明日、収穫の時が来る。
不思議と、恐怖はない。農家として、収穫の喜びは知っている。実った作物が刈り取られるのは、自然の摂理だ。わしらも同じだ。
最後に一つだけ。この「ぶろぐ」を読んでいる者がいるなら。
この土地の作物を、決して口にしてはならん。米も、野菜も、水も。全てに、あの方の血が混じっている。口にした瞬間、おまえもこの土地の一部になる。
さらばだ。良い土に還れることを、感謝する。