この巻は、私・大森義則の日記形式で記録する。
父・義雄は平成五年に他界した。「蔵の記録を守れ」という言葉を残して。
平成8年(1996年)9月14日
昨夜、また光が降った。父の記録にある通りの光だ。
村の古老たちは、すでに知っていた。「今年は来る年だ」と。
来年の奉納祭の準備を始めなければならない。
平成9年(1997年)10月3日
奉納祭の贄を選ぶ時期になった。
今年は、私の妻・大森花子さんが自ら申し出てくれた。
六十八歳。「もう十分生きた。村のために使ってください」と言った。
私は、何も言えなかった。
平成9年(1997年)11月15日
奉納祭が終わった。
儀式は、正しく行われた。
私の妻・大森花子さんは、「ありがとうございます」と言って、地下祭壇に入っていった。
扉を閉めた後、中から声は聞こえなかった。
翌朝、扉を開けると、中には何もなかった。
何も。
平成12年(2000年)1月1日
新しい千年が始まった。
村は平和だ。
農作物は豊かに実り、誰も病気にならず、事故も起きない。
これが、「正しい儀式」の結果なのだろう。
しかし、私は毎晩、████さんの顔を夢に見る。
「ありがとうございます」という声を聞く。
これは、正しいことなのか。
私には、もう分からない。
第四巻はここで終わる。
次の降臨は、令和の時代に来るだろうと、私は予測している。
その時の村長が、この記録を読んでいることを願う。
そして、正しい選択をしてほしい。
私には、もう「正しい選択」が何なのか、分からなくなってしまった。
── 大森義則、記す