████氏が、ついに禍ツ神文字の全解読を完了した。 解読には二十年以上の歳月を要した。 氏は現在、八十二歳である。
解読によれば、禍ツ神は「星を喰らう口」と呼ばれる存在であり、 宇宙の果てから定期的に地球を訪れるという。 その目的は、「魂の収穫」である。
禍ツ神は、正しい儀式によって「迎えられた」場合、 村に豊穣と平和をもたらす。 しかし、正しい儀式を行わなかった場合、 または儀式を拒んだ場合、 村人を「強制的に収穫」する。
昭和三十一年の失踪事件は、「強制収穫」であった。
正しい儀式の手順は、以下の通りである。
氏は、この儀式を「黄泉戸の奉納」と名付けた。 以来、黄泉戸村では、星の光が目撃された翌年に必ず奉納祭が行われるようになった。
私は、この儀式が正しいものかどうか、今でも確信が持てない。 しかし、昭和四十八年の奉納祭以降、失踪事件は起きていない。 それが、すべてを物語っている。
── 大森義雄、記す