黄泉戸村役場 内部保管文書 / 蔵 第三巻
禍ツ神降臨記録 第三巻
── 儀式の確立
記録者:黄泉戸村役場 第四代村長 大森義雄
記録日:昭和47年(1972年)3月
極秘

████氏が、ついに禍ツ神文字の全解読を完了した。 解読には二十年以上の歳月を要した。 氏は現在、八十二歳である。

解読によれば、禍ツ神は「星を喰らう口」と呼ばれる存在であり、 宇宙の果てから定期的に地球を訪れるという。 その目的は、「魂の収穫」である。

禍ツ神は、正しい儀式によって「迎えられた」場合、 村に豊穣と平和をもたらす。 しかし、正しい儀式を行わなかった場合、 または儀式を拒んだ場合、 村人を「強制的に収穫」する。

昭和三十一年の失踪事件は、「強制収穫」であった。

正しい儀式の手順は、以下の通りである。

  1. 一星の光が降り注いだ翌年の秋、「奉納祭」を執り行う。
  2. 二全村民が白装束を着用し、黄泉戸神社の境内に集まる。
  3. 三神主が禍ツ神文字で書かれた「奉納の祝詞」を読み上げる。
  4. 四村民の中から「贄」を一名選ぶ。贄は自ら進んで申し出た者でなければならない。
  5. 五贄は、集会所の地下祭壇において、禍ツ神に「捧げられる」。
  6. 六儀式が正しく行われた場合、禍ツ神は満足して去り、次の降臨まで村に平和が訪れる。

氏は、この儀式を「黄泉戸の奉納」と名付けた。 以来、黄泉戸村では、星の光が目撃された翌年に必ず奉納祭が行われるようになった。

私は、この儀式が正しいものかどうか、今でも確信が持てない。 しかし、昭和四十八年の奉納祭以降、失踪事件は起きていない。 それが、すべてを物語っている。

── 大森義雄、記す

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