黄泉戸村蔵 ── 内部保管文書 第八番
村長 黒川義孝 遺書
作成者:黒川義孝(黄泉戸村長)
作成日:令和2年11月15日
発見場所:村長室の机の引き出し(施錠されていた)
※ この文書は、村長室の調査中に発見された。発見者:山口隆(総務課長)
令和二年十一月十五日 深夜

この遺書を読んでいる人へ。

私は、黄泉戸村長・黒川義孝です。 今夜、私は村民とともに神社へ向かいます。 この遺書は、私が戻らないことを前提に書いています。

まず、謝罪を述べなければなりません。

私は、村民に真実を告げませんでした。 奉納祭が何を意味するのか、参加することで何が起きるのか、 誰にも教えませんでした。

それは正しい判断だったと思っていました。

※ここから書き直した形跡がある

いいえ。正しくなかった。 私は、ただ怖かったのです。 真実を告げれば、村民が逃げようとする。 逃げようとすれば、禍ツ神が怒る。 禍ツ神が怒れば、何が起きるかわからない。 だから、黙っていた。

父から村長職を引き継いだ時、父はこう言いました。 「村長の仕事は、村民を守ることだ。しかし、禍ツ神からは守れない。 だから、村民が苦しまないように、真実を隠すことが村長の役目だ」と。

私は、その言葉を信じてきました。 今も、半分は信じています。

田中一郎議員が、真実を知ってしまいました。 私は彼を止めようとしました。 強制的な手段も検討しました。

※ここは読めないように消した。でも、消しきれていない。

田中議員は、今どこにいるのでしょう。 私は、彼に何もしていません。 ただ、「外に出ることはできない」と伝えただけです。 その後、彼は姿を消しました。 自分で隠れたのか、それとも……。

禍ツ神の声が、毎晩聞こえます。 「帰っておいで」という声が。 父も、祖父も、同じ声を聞いたと言っていました。 その声は、とても優しい。

だから、これは「祝福」なのだと、私は信じたい。

でも、田中議員の言葉が頭から離れない。 「これは集団自決の計画だ」という言葉が。

村民の皆さんへ。 あなたたちは、何も悪いことをしていません。 ただ、この村に生まれただけです。 それが、あなたたちの「罪」だとしたら、 その罪を作ったのは、私たち村長の一族です。

田中さやかさんへ。 ひなちゃんを、よろしくお願いします。 ……いや、もう間に合わないか。

橘神主へ。 あなたは、私より真実を知っている。 でも、あなたも同じように苦しんでいた。 それだけは、わかっていました。

黄泉戸村は、美しい村でした。
山があり、川があり、人々が笑っていた。
その記憶だけを、持って行きます。

このサイトを見ている、村外の方へ。

黄泉戸村には、もう誰もいません。 でも、記録は残っています。 蔵の文書を、すべて読んでください。 そして、私たちのことを、覚えていてください。

禍ツ神は、次の百年を待っています。 令和102年、また「収穫」が始まります。 その時、誰かがこの記録を見つけて、 次の村民を救ってくれることを、願っています。

禍神口星喂

……声が聞こえる。行かなければ。

黒川義孝
黄泉戸村長(第十二代)
令和二年十一月十五日
【発見者メモ:山口隆 令和2年11月15日 22:10】

村長室の机の引き出しから発見。遺書の他に、以下のものが入っていた:

封筒の中身は確認していない。
この遺書とともに蔵に保管する。
私も、もうすぐ行く。

「次の村長へ」の封筒の中身:「この村を、終わらせてください。禍ツ神との契約を、破棄してください。方法は、御神体を破壊することです。御神体は黒い鏡です。鏡を割れば、扉は閉じます。次の収穫は起きません。でも、私にはできなかった。あなたに、託します。鏡の間へは、神社の地下参道の最奥から。場所は、村の地図の座標記録に残してある。」

この遺書と、R-001〜R-004の復元報告を同じ端末で読んだあと、記録復元端末へ戻ってください。山口隆が外へ送った第零資料の復元経路が確認できます。
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