村脱出計画
黄泉戸村から東京へ。17歳の受験日記と日常。
川島蒼太(17歳)|最終更新:令和2年11月13日

このブログについて

はじめまして。黄泉戸村に住む高校2年生の川島蒼太です。

このブログは、俺が東京の大学に合格して村を出るまでの記録です。タイトルは「村脱出計画」。別に村が嫌いなわけじゃないけど、ここにいたら何もできないから。

黄泉戸村は、山の中の小さな村です。コンビニもない、映画館もない、友達は全員顔見知り。悪い場所じゃないけど、俺にはここじゃない場所がある気がする。

来年の春、絶対に東京に行く。それだけ。

高3になった

高3になった。いよいよ受験本番の年。志望校は東京の国立大学。理系。

村の中で大学に行くのは毎年2〜3人くらい。みんな地元の大学に行って、そのまま村に戻ってくる。俺はそうなりたくない。

親父は「村を継げ」と言う。農家の息子だから。でも俺は農業がしたいわけじゃない。村長も「村の若者が出て行くのは寂しい」と言う。でも、俺の人生は俺のものだ。

今年は特別な年らしい。御神体降臨100周年とかで、村中が盛り上がっている。俺には関係ない話だけど。

変な音のこと

最近、夜中に変な音が聞こえる。

蝉の声に似てるけど、蝉じゃない。音の数が多すぎる。それに、蝉は夜中にあんなに鳴かない。

音に合わせて、頭の中に何かが浮かんでくる気がする。幾何学的な模様みたいなもの。目を閉じると見える。目を開けると消える。

親父に話したら「昔からそういう音が聞こえる時期がある」と言った。「御神体の声だ」と。

御神体の声?石が声を出すわけがない。でも、音は確かに聞こえる。

受験勉強に集中しなきゃいけないのに、夜眠れない日が続いている。

合格発表と、村のこと

推薦入試で合格した。東京の大学。

嬉しいはずなのに、なんか変な気分だ。

村長が「おめでとう。でも、11月の奉納祭には必ず参加するように」と言いに来た。「全村民参加だ。合格したからといって、例外はない」と。

なんで合格の話をしてるのに奉納祭の話になるんだ。

最近、村の雰囲気がおかしい。みんなどこかぼんやりしてる。目が、なんか遠い。俺の友達も、話しかけると「奉納祭が楽しみだ」とか「今年は特別だ」とか、そんな話しかしない。

俺だけ、何かに乗り遅れてる気がする。それが怖いような、安心するような。

逃げようとした

正直に書く。

奉納祭の前に村を出ようとした。荷物をまとめて、バスに乗ろうとした。

でも、バスが来なかった。時刻表通りに来るはずのバスが、来なかった。

村長に電話したら、「バス会社に確認したところ、今月は運休だそうだ」と言った。そんな話、聞いていない。

車で山を越えようとしたら、道が土砂崩れで通れなかった。

偶然が重なっているだけだと思う。そう思いたい。

でも、なんか、もう逃げられない気がしてきた。

あの音が、また聞こえ始めた。

明後日のこと

明後日、奉納祭がある。

もう逃げようとは思わない。なんでかは、うまく説明できない。ただ、逃げる必要がない気がしてきた。

音が、ずっと聞こえている。頭の中の模様が、ずっと見えている。でも、もう怖くない。むしろ、きれいだと思う。

東京の大学の入学手続きの書類が届いている。でも、行かなくていいかもしれない。ここにいてもいいかもしれない。

村長が言っていた。「選ばれた者は、最後に必ず分かる」と。

俺にも、分かってきた気がする。

もし受かったら、二度とこの村には戻らないと思っていた。でも今は、戻ってきてよかったと思う。

このブログを読んでいる人へ。もし黄泉戸村に来る機会があったら、神社に寄ってみてください。御神体を見てみてください。きっと、分かります。

※ 令和2年11月13日以降の更新はありません。
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