黄泉戸川だより
川と山と、時々魚。定年後の穏やかな日々。
山本吉雄(68歳)|最終更新:令和2年11月12日

春の黄泉戸川

桜が散って、川面に花びらが流れる季節になった。今年もヤマメが上がってきている。

朝5時に起きて、いつもの場所へ。水温はまだ低いが、瀬の脇に魚影が見える。今日は3匹。型は小さいが、春の魚は美しい。

帰り道、神社の前を通ったら、橘さんが境内を掃除していた。「今年は特別な年ですからね」と笑っていた。100周年のことだろう。

夏の夜釣り

暑い日が続く。夜になっても気温が下がらない。

夜釣りに出かけた。月明かりの下、川の音だけが聞こえる。いつもなら虫の声がうるさいくらいなのに、今夜は妙に静かだ。

2時間粘ったが、当たりなし。魚が沈んでいるのか、それとも――。

帰り際、川の上流から低い音が聞こえた気がした。地鳴りのような、でも違う。何かが震えているような音。気のせいだろう。

川の色

最近、川の色がおかしい。透明度は変わらないのに、底の石が黒く見える。

魚も減った。いつもの場所にヤマメがいない。上流に移動したのかもしれないが、この時期にそんなことは今まで一度もなかった。

村の人に聞いても「気のせいだろう」と言う。でも、40年この川を見てきた俺には分かる。何かが変わっている。

奉納祭が近いからだろうか。祭りの前になると、村全体が少しおかしくなる気がする。今年は特にそうだ。

最後の釣り

明後日から奉納祭の準備で忙しくなる。今日が今年最後の釣りになるかもしれない。

朝から川に出た。一匹も釣れなかった。川に魚がいない。一匹も。

水は澄んでいる。流れも正常。でも、生き物の気配がない。虫も、鳥も。

川だけが、ただ流れている。

帰り道、村長に会った。「吉雄さんも明日から準備に参加してくださいね。全員参加ですから」と言われた。もちろんだ。100年に一度の祭りだ。参加しないわけがない。

でも、なぜだろう。竿を仕舞う時、もう二度とこの川で釣りをすることはないような気がした。

※ 令和2年11月12日以降の更新はありません。

山本吉雄

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