昭和二十三年の秋、黄泉戸村の北東に位置する████山の山頂付近において、 村民数名が「空から降ってくる光」を目撃した。 光は一夜のうちに三度、同じ方角から降り注ぎ、 翌朝には山頂付近の森が円形に焼け落ちていた。
村の古老・████翁は、これを「禍ツ神の降臨」と呼んだ。 翁の話によれば、黄泉戸村には三百年以上前から、 「星から来る神」に関する言い伝えが存在していたという。
私は当初、これを迷信として退けようとした。 しかし、焼け落ちた森の中心に残された「痕跡」を見た時、 私の考えは根本から覆された。
痕跡は、直径およそ三メートルの円形の窪みであった。 窪みの底には、見たこともない文字が刻まれていた。 その文字は、後に「禍ツ神文字」と呼ばれるようになるものである。
翁はその文字を見て、深くお辞儀をした。 そして、私にこう言った。
「神様が、また来られた。
今度こそ、正しくお迎えしなければならない。
前回は、失敗した。だから、村人が死んだ。
今度は、失敗してはならない。」
翁の言う「前回」が何を指すのか、私には分からなかった。 しかし、その後の調査で、黄泉戸村には過去に二度、 「集団失踪事件」が起きていたことが分かった。 いずれも、「星の光」が目撃された年の翌年のことであった。
私は、この記録を残すことを決意した。
次の世代の村長が、同じ過ちを繰り返さないために。
── 大森義之、記す
(欄外・鉛筆 橘宗一郎の筆)祖父は、あの式を帰りとは呼ばなかった。人を見送るときの言葉で呼んだ。