広報よみど 令和2年7月号JULY 2020

紅葉

今月の表紙:色づき始めた山々の紅葉。赤色が目に焼き付きます。

奉納祭まで、あと一ヶ月。最後の準備を。

来る11月15日、我々の村の未来を、そして我々自身の存在を根底から変える奉納祭が執り行われます。これは、古来より伝わる最も神聖な儀式であり、我々が「次」の段階へ進化するための唯一の道です。この一ヶ月、村民の皆様は、心身を極限まで清め、この日を迎える準備をしてください。

各戸に配布済みの「奉納祭のしおり」を熟読し、当日の手順を完全に記憶してください。当日は、指定された時刻に、指定された場所へ、指定された衣服を身につけ、一切の私語なくお集まりください。この日に至るまでの全ての出来事は、この瞬間のための布石でした。我々は、大いなる存在と一つになるのです。

村からのお知らせ

最後の運動会10月10日、黄泉戸小学校にて「最後の」村民運動会が開催されました。子供からお年寄りまで、全村民が参加し、来るべき日に向けての結束を固め合いました。
診療所の閉鎖村の唯一の診療所である「田中医院」が、院長の「魂の浄化期間」入りに伴い、完全に閉鎖されました。村外の病院への定期バスも、奉納祭準備のため、10月末をもって運行を停止します。体調管理には万全を期してください。

連載コラム「村の言い伝え」第10回

とうとう、その時が近づいてきました。村中が白装束の準備に追われ、異様な熱気に包まれています。

けいさつも、役場も、機能していません。すべては神主様と村長の指示の下、粛々と動いています。

あきらめにも似た感情が、私の心を支配しています。もう、どうすることもできない。流れに身を任せるだけです。

うつくしい秋の空が、なぜかとても遠く感じられます。私たちは、どこへ向かっているのでしょうか。

よるになると、地下から響く低い音が、村中を震わせます。それは、まるで巨大な生き物の心音のようです。

ろうじんたちは、静かに手を合わせています。「お迎えが来る」と、穏やかな表情で。彼らは何かを知っている。

この記録が、後世の誰かの目に触れることはあるのでしょうか。それとも、すべては消え去るのでしょうか。

びょうきで寝たきりの者まで、神社へ運ばれる手はずになっています。誰も、一人残らず。例外なく。

暮らしのコーナー

赤い水

村の井戸水が赤みを帯びる現象について、役場での水質調査の結果、「健康への影響はない」との結論に至りました。むしろ、この水を飲んだ住民からは「体調が良くなった」「力がみなぎる」といった声が多数寄せられています。これは、大いなる存在からの祝福に他なりません。安心してご利用ください。

保護された方々へ

先月、村内で「保護」された村外の方々は、現在、集会所にて奉納祭に参加するための「再教育」を受けています。彼らもまた、我々と共に、大いなる存在の降臨を目撃する栄誉にあずかることになります。彼らの魂が、我々の村によって救済されることを、心から祝福しましょう。

村民の声

「もう誰も村の外へは行けません。道は封鎖されました。でも、これでいいのです。外の世界は汚れていますから。」

(上町地区・60代男性)

「毎日、あの夢を見ます。暗くて、温かくて、みんなが一つになる夢。とても幸せな夢です。」

(下町地区・20代女性)

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黄泉戸村役場 奉納祭準備委員会

「奉納祭のしおり」を紛失された方は、速やかに役場までお越しください。再発行には、厳格な審査が必要です。

学校だより「ひまわり」

夏季特別合宿

7月20日〜8月31日、全校児童による夏季特別合宿を実施します。場所は黄泉戸神社境内。内容は奉納祭に向けた儀式の練習です。保護者の皆様のご理解をお願いします。

重要

夏休み期間中、児童の村外への外出は禁止とします。これは安全上の措置です。ご協力をお願いします。

保健だより

村民の皆様へ

もはや「健康」という概念は不要です。我々の体は、日々、より完全なものへと変容しています。食事の量が減っても体力は増し、睡眠を取らなくても疲れを感じません。これは病気ではありません。進化です。

なお、一部の方(主に田中さやか氏)から不安の声が上がっていますが、これは変容への適応が遅れているだけです。奉納祭までには、全員が同じ段階に達するでしょう。

連載コラム「黄泉戸の四季」第10回

夏。あの星が、肉眼ではっきりと見えるようになった。昼間でも、空を見上げれば、青空の中に黒い点として確認できる。それは星ではない。もっと近い何か。もっと大きな何か。村人たちは毎晩、屋根の上に出て、あれを見上げている。あれが降りてくる日を、待っている。100年前と同じように。いや、100年前は「落ちてきた」のだ。今度は、「迎えに来る」のだ。

文・写真:黄泉戸村郷土史研究会

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