来る11月15日、午後11時。
全村民は、黄泉戸神社境内にお集まりください。
これは、終わりではありません。始まりです。
我々は、ひとつになるのです。
古き肉体を捨て、新たな存在へと昇華するのです。
もう、悲しみも、苦しみも、病も、死もありません。
ただ、永遠の安らぎと、大いなる存在との一体感があるのみ。
さあ、共に参りましょう。約束の地へ。
今月の表紙:奉納祭の準備が整った黄泉戸神社。空には不気味な赤い星が輝いています。
来る11月15日、午後11時。
全村民は、黄泉戸神社境内にお集まりください。
これは、終わりではありません。始まりです。
我々は、ひとつになるのです。
古き肉体を捨て、新たな存在へと昇華するのです。
もう、悲しみも、苦しみも、病も、死もありません。
ただ、永遠の安らぎと、大いなる存在との一体感があるのみ。
さあ、共に参りましょう。約束の地へ。
| 世界の閉鎖 | 11月1日、村外への唯一の道であるトンネルが、原因不明の崩落により通行不能となりました。復旧の目処は立っていません。同日、村の電話線、インターネット回線がすべて不通となりました。我々は、外界から完全に隔離されました。 |
| 時間の停止 | 11月10日、村のすべての時計が、午後11時15分を指したまま停止しました。時間は、もはや意味を成しません。我々は、永遠を手に入れるのです。 |
| 最後の来訪者 | 集会所で「再教育」を受けていた村外の方々は、我々の仲間となることを受け入れました。彼らは、最も純粋な捧げ物として、我々の先頭に立つことになります。彼らの魂に、最大の祝福を。 |
わかるのです。今なら。なぜ彼らが、あんなにも嬉しそうだったのか。恐怖の先にある、絶対的な安心感。
れんらく船も、バスも、もう来ません。村に続く道は、すべて封鎖されました。外界とのつながりは絶たれました。
らんぼうな言葉を使う者も、今はもういません。皆が静かに、微笑みを浮かべながら、その時を待っています。
はやまる鼓動。それは恐怖ではなく、期待。大いなるものと一つになることへの、純粋な喜び。
えらばれた我々は、苦しみから解放されます。個という孤独な殻を脱ぎ捨てて、完全なる存在へと昇華するのです。
いのりは届きました。御神体から溢れる光が、村を優しく包み込んでいます。温かく、眩しい光。
えがいた理想郷が、すぐそこにあります。もう、何も恐れることはありません。何も、考える必要はありません。
ん……。鐘の音が聞こえます。さあ、行きましょう。みんなが待っています。一つになるために。
「準備は整いました。あとは、その時を待つだけです。恐れはありません。私たちは永遠になるのですから。」
「……たすけて……だれか……」